ひどいニキビ・治らないニキビ|重症ニキビの切り札イソトレチノインとは?|あゆ皮フ科クリニック|高槻市の一般皮膚科・小児皮膚科・皮膚外科・美容皮膚科

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ひどいニキビ・治らないニキビ|重症ニキビの切り札イソトレチノインとは?|あゆ皮フ科クリニック|高槻市の一般皮膚科・小児皮膚科・皮膚外科・美容皮膚科

ひどいニキビ・治らないニキビ|重症ニキビの切り札イソトレチノインとは?

こんにちは。大阪府高槻市の皮膚科と美容皮膚科のハイブリッド診療を行うあゆ皮膚科クリニック院長菊澤亜夕子です。

難しい用語は私も嫌いですが、今日は経口イソトレチノイン(イソトレチノインの飲み薬)について、面白くない感じ←で詳しく書いてみようと思います。

浅いニキビ(軽症のニキビ)

   

このくらいの浅いぷつぷつとしたニキビは、保険適応のニキビ用の外用剤(過酸化ベンゾイル、アダパレンなど)や、ピーリングやイオン導入などのメディカルエステで長期的に頑張ればなんとかなることが多いです。

保険適応の外用剤↑

ニキビは慢性疾患なので、何かにかぶれるような接触皮膚炎に対してステロイド外用剤で1週間でスッキリ良くなる病態とは異なり、治療に月単位の時間は要します。よく他のクリニックで出された薬が全然効きませんと来院されますが、時間がかかることを説明し、同じ塗り薬でも使用方法をしっかり指導して、ホームケアを頑張っていただくとゆっくりと改善することをしばしば経験します。

深いニキビ(重症のニキビ)

一方で、下記のような大きなニキビや深いニキビはなかなか先ほど示した外用剤が効きにくいケースがあります。

残念ながら写真はありませんが、さらに難治性で最重症のニキビもあります。ニキビの炎症が深い部分にあり硬くしこりとして触れたり、赤い盛り上がりを大きく膨らみとしてふれたり、時にブヨブヨするような波動を触れる大型のニキビであったり。医学的には嚢腫様ざ瘡、電撃性ざ瘡などと呼ばれるタイプのニキビです。

これらの重症のニキビには第一選択薬は経口イソトレチノイン。なのに、保険適応外!これを早めに入れないと、後々瘢痕という一生治らない傷跡を残すケースも少なくありませんが、やっぱり保険適応外。経口イソトレチノインはアメリカでは、30年以上前よりFDAの認可のもと、他の治療薬で抵抗性の重症ニキビに使用されてきましたが、現在日本では認可されてない故に、当院でも確かな輸入業者より個人輸入しているのが現状です。

なぜよく効くお薬が保険適応外なの?

そもそもこんなに有効でエビデンスのある治療薬がなぜ認可されていないかというと、催奇形性つまり赤ちゃんに影響が出る可能性がある薬だからです。

イソトレチノインの正体とは

イソトレチノインは、 13-シスレチノイン酸(こんな覚えられない単語はスルーで・・)というビタミンA誘導体の一つです。

作用機序としては、皮脂腺細胞のアポトーシス(簡単にいうと、皮脂の原因となる細胞に自死してもらう)を誘導して、皮脂腺を小さくして、皮脂の分泌量を減らすことがわかっています。毛包の角化異常(毛穴の角質が厚くなり毛穴を塞ぐ状態)を正常化させて、毛穴詰まりを解消したり、抗炎症作用もあります。

アメリカやヨーロッパのガイドラインでは、イソトレチノイン重症から最重症のニキビには第一選択として、まず選ばれるべきお薬としての位置付けになっています。

イソトレチノインは内服する量が重要

経口イソトレチノインは容量がいろんな意味で結構大事でして、海外での使用に関しては0.1mg-1.0mg/kgの幅で内服していることがほとんどです(って結構な幅ですよね・・)

いろんな意味で容量が大事というは、容量によって皮脂分泌を抑える効果が違うことと、副作用もまた容量によって違ってくるからです。多い量を長期間のむとよく効いて再発も少ないけど、副作用もまた量が多い方が強く出やすいのです。

最大累積量という概念があり、総合内服量が150mg/kgを超えると容量依存性(量が増えれば増えるほど)悪影響を及ぼすと言われています。150mg/k gが最終的な適正の許容範囲の容量です。例えば50kgの方ですと、10mgを750日つまり大体2年、20mgを大体1年ですね。私自身はアメリカやヨーロッパでよく処方されると言われる量より、日本人では少し少なくても十分かなという臨床経験から重症度と体重によって10-20mgくらいで処方することが多いです。日本のガイドラインにはその具体的な推奨量は記されていません。

ただ副作用ばかり恐れて、少ない量を、少ない期間だけ処方しても、再発しやすい傾向もあり、一方で長期の乱用は体内に蓄積され害を及ぼすこともあるので、容量や期間の調整は難しいなと思いながら、患者さんの「体重」「重症度」などから決定しています。つまり処方に結構さじ加減が必要な治療だと感じています。

内服方法

食事特に脂質の高い食事と一緒に摂ることで薬の吸収率が上がります。逆に空腹時に飲むと効果が弱まります。イギリスでは、ミルク、バター、オイルと一緒に飲むことが推奨されている様ですね。とりあえず朝ごはん抜きの人は、夕食後に飲む、朝もきっちり食べて朝が飲み忘れにくい人は朝食後に飲む、とそんな具合です。

併用できないお薬

・他のビタミンA
・関節リウマチや皮膚科の病気尋常性乾癬などに使うメトトレキサート
・ミノマイシン、ビブラマイシンなどのテトラサイクリン系の抗生剤
・フェニトイン、カルバマゼピンなどの抗てんかん薬
・経口ステロイド
・・・・ちょっと理由まではスルーします

なお、経口ピルはむしろイソトレチノインが持つ催奇形性の観点から併用を推奨されています

副作用

最も頻度が高く、ほぼ必発とも言えるのが唇の乾燥です。ガサガサになり、時にひび割れを生じます。リップクリームで予防し、時にステロイド外用剤で対応します。

頻度は高くはないけど、時々生じるのが脂質異常症。中性脂肪が上昇することがあります。これにより心臓のイベントを生じたり、急だと膵炎になったりもするので注意が必要です。中性脂肪の上昇では、しんどい・・などの自覚症状には基本現れないので、血液検査を行う必要があります。当院では、開始前(元々は問題がないことを確認)、内服2-3ヶ月で再検査を推奨しています。保険適応外の薬なので、検査も自費になります。

その他頻度の低い副作用として、皮膚粘膜の乾燥、光線過敏、肝酵素の上昇、気分の落ち込みや鬱などの精神症状、眼瞼炎・結膜炎、炎症性腸疾患、肝炎、頭痛・嘔気などの頭蓋内圧亢進症、めまいなど。

そして忘れてはいけないのが、先ほどもお伝えした催奇形性。赤ちゃんに影響が出ることがあるので、内服中及び服薬終了後1-2ヶ月の避妊が必要になります。イソトレチノインは1ヶ月以内には体内から排出されるためです。内服終了後1ヶ月も献血も控えるべきです。

やっぱりよく効く経口イソトレチン

と色々と説明したのですが、重症のニキビの方には感動的に、劇的にめちゃくちゃ効きます。症状の強い方は、時に内服1週間くらいで皮膚にこもっていたニキビが、わあーーーーーー!!!とこれでもかってくらい飛び出して一気に悪くなったあと、シューーーーン、と引くことも経験します。一言で言うとあっけないけど、「一過性の悪化」を経ることがありますが、なんせよく効く薬。基本的に保険適応の標準治療を数ヶ月以上した方にしか出さない薬ですが、通常の治療で治りにくい方のみ処方して、効かない方はほぼ見ないくらいの印象です。そして適正量を、適切な期間内服していただいたのちに中止すると、中止後も年余にわたって効果が持続するので、再発してすぐに飲んでやめてを繰り返す経口抗菌剤とは全然違います。

勿論それなりのリスクもあるお薬ですし、医師の管理は必要にはなりますが、将来の肌投資として、ニキビ跡予防として、肌に治らない傷跡を残さないように必要な方には早めにお届けしたい薬でもあります。通院は初め1ヶ月ごと、安定している時は最大2ヶ月分処方しております。

治りにくい、ひどい、保険治療で頑張ってるのに成果がない方、ご相談にいらしてください。安易には出しません、慎重にはなりますし、適応は見極めますが、きちんとインフォームドコンセントして必要な方に処方いたします。

お気軽に、そしてとりあえずご相談くださいませ。お待ちしております♡