円形脱毛症に対する有効な治療、エキシマライトについて
- 2025年1月12日
- 皮膚科
大阪府高槻市の皮膚科と美容皮膚科のハイブリット診療を行うあゆ皮フ科クリニックの院長菊澤亜夕子です。
今日は円形脱毛症についてまとめてみようと思います。詳細な情報を希望される方には、皮フ科学会が出している円形脱毛症ガイドライン2024を参照されることをお勧めしますが、何ページにも渡る記述になっておりますので、簡単に知りたい方に向けての記事になります。
参考までにガイドラインはこちら
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/AAGL2024.pdf
それって本当に円形脱毛症?円形脱毛症の診断は?
円形脱毛症の診断は、典型的にコインサイズの丸い脱毛斑が1つないし複数ある場合は比較的簡単で、患者さん自ら円形脱毛ですと来院されます。ただ脱毛イコール円形脱毛症ではなく、実はさまざまな脱毛症があるのです。代表的には円形脱毛や壮年性脱毛(AGA)がありますが、そのほかにも抜毛症や瘢痕性脱毛など、あまり一般的に知られていない疾患も実はあります。なので、まずは皮膚科で診断をつけてもらうことが大事です。
初診の患者さんには、まずは全体の抜け具合を肉眼で確認。髪の毛を引っ張って勢いを確認。その後はこんな拡大鏡(ダーモスコピー)を用いて
失礼ながら、顔を頭皮にグッと近づけて、じっくり頭皮〜毛の状態を観察します。これをトリコスコピーと呼びます。下記のような円形脱毛症に特徴的な所見があるかなーと、見ているのです。
日本皮膚科学会 ガイドライン2024より引用
病気の勢いを判断するにもトリコスコピーが有用ですので、治療途中の方にも時々確認しているのは、このためです。
円形脱毛症の原因は?
初診の患者さんにまず聞かれるのが、原因。昔はストレスが〜なんて話をよく聞いていたかもしれませんし、一般的にはまだそのような解釈をされることが多いですが、医学もどんどん進歩を遂げており、食べ物や私生活の癖などが原因ではなく、毛包由来の自己抗原をターゲットにした自己免疫反応が誘導されるとされています。
ちょっと難しいですが具体的には、INF-γ、CD8陽性、NK G2D陽性の細胞障害性T細胞が活性化することによるということがわかってきています。その機序およびターゲットになる細胞も明確になってきており、それらに対する新薬も登場してきています。
つまりストレスをなくすなんてことはあまり考えず、自分を責めずに、悩みすぎずに前向きに治療を受けるのが一番ですね。
治療法について
まずはステロイド塗り薬
円形脱毛症の治療を考える上で、年齢(小児か成人か)、病期(発症後間もないか、半年以上経過しているか)、脱毛の重症度(脱毛面積)などが、重要なポイントになります。
ただどんなタイプでもまずは塗り薬がファーストです。体にも財布にも負担なく、安全なステロイド外用剤ですね。そしてステロイド外用剤よりは推奨度は落ちますが、同時にフロジン液(カルプロニウム塩化物)を処方することもあります。でも一番大事なのはステロイド外用剤です。
同時に副作用も少ないので、セファランチンの内服を処方することもありますが、こちらも推奨度は低め。
エキシマライトの照射
その上で、発症間もない方ですと、まず推奨されるのが、エキシマライトです。痛くない、安全性が高い、短時間で終わる、3割負担の方で1回1000円ほどとコストも安い、そして治療効果が高い!!
こんな機械をピッと数秒当てるだけ!初回はもう終わったん?とお子様もびっくりの速さで何事もないかのように終わります。
ちょーど今月の学会誌における臨床研究報告でも、非常に良い結果が発表されていました。単発型円形脱毛症患者の後方視的調査では、30例のうち97.7%が平均3.6ヶ月で治癒し、治療期間は1.5-7ヶ月。年齢が高いほど照射回数が多くなる傾向で、治療頻度が高い場合は治療期間が短縮される可能性が示唆されたとのこと。つまり、週2回頑張って通うとより早く治癒する傾向ということですね。Aesthetic Dermatology vol.34:521〜528,2024
実際には、毎週照射していても病勢が強く拡大することもありますし、全例がエキシマライトのみで治癒するとはいえませんが、現場で治療をしていると日々エキシマライトの有効性を実感します。週1−2回通院してくださる方ですと、10回前後くらいで発毛してくる印象です。本当は当院でもデータをとって数字で実証しないといけないですね。怠けてます・・
リスクに関しては、主にはやけどです。照射線量は段階的に上げていくので、大きなやけどを負うことは現実的にはほぼないでしょう。
2020年に保険適応になったばかり、当院でもこのエキシマライトを導入してまだ一年経っておりませんので、これからもどんどんデータを蓄積していく必要はありますが、とても期待できる機器だと思います。
ステロイド(ケナコルト)の局所注射
脱毛範囲が少ないケースでは、ステロイドの局所注射、つまり直接頭部の脱毛部位に注射で薬を打つ方法も有効性は高いですが、痛みや皮膚萎縮などの副作用もあり、当院ではエキシマライトを優先しております。
ステロイドパルス療法
また成人の場合で病勢が強く、勢いよく脱毛が広がっていくケースでは発症後まもなくステロイドパルス療法と呼ばれる、高容量のステロイド注射を3日間点滴する方法を行うこともあります。入院が必要になるので、その場合は基幹病院への紹介となりますが、大概は点滴の期間だけ入院しに行っていただき、その前後は当院にエキシマライトの通院になります。
新薬の飲み薬
頭の半分以上の脱毛で、罹病期間が半年以上で、毛髪に自然再生が見られず病勢が続く場合には、新薬であるJAK阻害剤と呼ばれるリットフロー(リトレシチニブ)やオルミエント(バリシチニブ)の内服も選択肢になります。いづれも高額な薬剤にはなりますし、導入前の検査等も必要になりますので、適応と思わしき場合は基幹病院への紹介となります。ただ、この薬を必要とするケースは実際には少数です。
その他
局所の免疫療法といって、わざとにかぶれる物質で、頭皮にかぶれを生じさせて行う塗る治療(痒みなどを含めて割と負担の大きい治療で、保険適応外のため当院では現状採用なし)、液体窒素による治療、ミノキシジルの外用・内服などその他にも治療はありますが、主な治療ではないので今回は割愛しました。
かつらという選択肢もあり
またウィッグについては推奨度も高く、少しでも心穏やかに、ストレスを少なく過ごすにはとても良い選択肢であると考えています。ウィッグも安くはありませんが、クオリティの高いものも出てきているので、ちょっと気分が上がるような取り組みとして、ご検討いただけるとと思います。
当院では、美容医療も保険診療も行っております。薄毛のAGAだけではなく、脱毛全般でお悩みの方、お気軽にご相談いただければと思います。初めの一歩は勇気が必要かもしれませんが、患者さんの毎日が少しでも楽しくなるように役立ちたいと思いながら真面目にコツコツ診療しています。