爪白癬(爪水虫)の治療〜内服・外用その違いについて〜|あゆ皮フ科クリニック|高槻市の一般皮膚科・小児皮膚科・皮膚外科・美容皮膚科

〒569-1142 大阪府高槻市宮田町2-40-10 たかつき宮田ビルII 2F
Tel.072-668-1415
ヘッダー画像

ブログ

爪白癬(爪水虫)の治療〜内服・外用その違いについて〜|あゆ皮フ科クリニック|高槻市の一般皮膚科・小児皮膚科・皮膚外科・美容皮膚科

爪白癬(爪水虫)の治療〜内服・外用その違いについて〜

こんにちは。大阪府高槻市の皮膚科と美容皮膚科のハイブリッド診療を行うあゆ皮フ科クリニック院長の菊澤亜夕子です。

今日は皮膚科の代表疾患、爪白癬(つめはくせん)のお話です。爪水虫(つめみずむし)の方が聞き馴染みがあるかもしれませんね。白癬菌とは真菌つまりカビの一種です。その真菌はいろんな臓器に感染しますが、皮膚科では、①皮膚への感染(足白癬、手白癬、体部白癬、頭部白癬、要は全身どこでもあり。)と②爪への感染(足爪白癬、手爪白癬)を扱います。

皮膚の水虫は、基本的には塗り薬で治療を行います。飲まなくても十分に皮膚に薬は浸透し治療することができます。(ただし、感染の範囲やタイプにはより、塗るのが難しいほど広範囲な場合や、角化型白癬という手足の皮膚が分厚くなるようなタイプの水虫は除きます。)

一方で、爪に関しては塗り薬の浸透が悪く、皮膚の場合とは少し治療が異なりますので、そのあたりに触れ行こうと思います。

爪白癬(爪水虫)の診断について

まずは診断ですが、爪が分厚いイコール爪白癬と言えません。爪甲鉤彎症、爪乾癬、爪扁平苔癬など、他の疾患でも爪の肥厚や混濁や変形は生じるため、まずは診断が大事。「爪の水虫の治療を何年もしたけど治りません」という方の中で、そもそも水虫ではなかったということも稀ではないので、まずは診断をします。

①見立て

診断は、まずは見立てが大事。基本的に爪白癬は、皮膚への白癬菌の感染があり、そこから爪に白癬菌が侵入します。

故に、手足になんの粉(落屑)や皮めくれといった皮膚病変がなく、またこれまで手足の水虫の既往がない場合は、爪白癬は疑いにくいです。逆に皮膚にそれらしい病変があると、爪白癬の可能性が高まります。

②真菌検鏡

次に真菌検鏡。爪の一部を削り取って、顕微鏡で見て、真菌を同定します。

顕微鏡を覗くとこんな枝みたいな構造が見えます。皮膚の真菌はほぼもれなく、これで診断がつき見落としは多くありませんが、爪については皮膚に比べて検査の見落としというか、うまく検査で真菌が見えないことも少なくないため、これではっきりしないときは、キットによる迅速検査(デルマクイック)があります。

③キットによる迅速検査(デルマクイック)

爪の一部を切らせていただき、爪を溶かして菌の有無を確認します。いづれの検査もほぼ痛みはなく、即日、数分で結果が判明します。あまり道具に頼ってはいけませんが、顕微鏡だけで診断を迫られる時代に比べると、このデルマクイックという検査キットのおかげで、随分と診断の精度が向上しました。偽陽性も稀でとても頼りになるキットです。菌がいると、コントロールと合わせて2本線のラインが浮き出てきて陽性とバシッと診断できます。

爪白癬(爪水虫)の治療について

効果が高いのは抗真菌剤内服

実は、爪については塗り薬の効き目がイマイチです。爪白癬にもタイプがあり、表在型爪白癬という表面的な感染パターン以外では、塗り薬だけで完治は難しいことも多いです。ですので効果を第一に考えると、飲み薬に軍杯が上がります。そう、一番有効なのは抗真菌剤の内服。

ただし、内服薬のデメリットもあります。吐き気などといった自覚症状のある副作用はあまり多くありませんが、血液検査上、肝機能障害や白血球減少といった気づかぬまに生じている副作用が出る可能性があり、定期的な血液検査が必要となります。定期検診するので、何かあったときに早期発見して薬を中止すれば基本的に不可逆的なトラブルとなることはないため、過剰な心配は不要ですが、ご高齢でベースの状態が少し落ちているケースでは、内服は推奨しておりません。爪白癬のみで命取りになることは基本ないため、より安全な外用剤での治療をお勧めすることが多いです。

内服薬は、ラミシール、イトリゾール、ネイリンの三種類があります。

ラミシール内服

昔からあるお薬で、毎日1錠ずつ飲みます。半年〜1年くらい。長いですよね。爪が生え変わるには時間がかかるので、長く飲みます。後発品のテルビナフィン錠があるので、値段は安いです。定番の薬で私は一番よく処方します。

イトリゾール内服

イトリゾールはパルス療法と言って、特殊な飲み方をします。50mgのカプセルを朝晩4カプセルずつ飲むことを1週間、その後3週間は飲むのをお休み。それを3クール繰り返すという方法で治療しま す。イトラコナゾールという後発品があるのでこちらも安価ですが、併用できない薬が多々あり、飲み方もやや複雑なので、使用頻度は少ないです。

ネイリン内服

ネイリンは比較的新しい薬で、毎日1カプセルを12週間連続で内服して終了となります。短期間で服薬を終了できるメリットは大きく、診察や血液検査の回数も少なくはなりますが、薬価は高いです。(2025年6月現在、1錠800円を超えるため、3割負担で3ヶ月2万円程度)

表在型爪白癬、内服が難しい場合の抗真菌外用剤

白癬に対する外用剤は様々ありますが、爪に有効性が高いのは、非イミダゾール系抗真菌剤クレナフィンとイミダゾール系抗真菌剤ルコナックこの2剤になります。なんなら2剤だけです。保険適応上、検査をしないと見立てだけで出してはいけないルールとなっています。ですので、基本的に顕微鏡のない内科では処方が難しく、皮膚科医は皆、顕微鏡での検査に慣れていますので必ず爪の一部を取って検査して診断してから処方します。長期的に1年〜1年半ほど塗ると完治も目指せます。全員完治するわけではないですが、1年で36%完治できたという、クレナフィンを提供する科研製薬のデータもあります。え、半分以下?と少ないように思われますが、これらの2剤が発売される以前はほぼ、外用剤だけでは完治が無理とされていましたので皮膚科医目線では画期的!であります。ただし肥厚が極端に強い例などは効果が出にくいですので、できるだけ爪を削ったり切ったりして混濁している部分を物理的に減らしながら外用を続けるのがおすすめです。

昔からある、ルリコン液、ニゾラールローションなども抗真菌剤ですが、爪に対して有効なのは前述の2剤。こんなん公には言いにくいけど、正直他はお気持ち的な塗り薬です。小声で言ってしもうた・・。

塗り薬のデメリットは、主には、めんどくさいことと、たまにかぶれが生じることくらいです。血液検査もなく、全身的な副作用はほとんどないので、ご高齢の方や内科的なご病気をお持ちの方も安心して使用できるのは、とてもいいですね。

番外編として、お風呂に入れない日も含めて最低限足だけは1日1回、きちんと石鹸で洗って、しっかり乾かして清潔を保つ。これも予防的にもとても大切なことです。

足の爪の変形は、爪白癬以外は治療が難しいことが多いですが、検査で水虫が出ればラッキー。治療の手立てがしっかりある疾患ですので、ぜひ前向きに治療に取り組みましょう^^

症例写真〜治癒の過程

当院でお写真を提供してくださった爪白癬のテルビナフィン内服治療中の方です。

よーく見ると・・・

爪の根元は濁りのない綺麗な爪、先端に白濁した爪が残っております。こうして濁った爪は上へ上へと押しやられて綺麗な爪が生え変わって治癒していきます。治療後の健常爪と、白癬部分の爪がとてもわかりやすく分かれています。治療に時間はかかりますが、目に見えて爪が綺麗になっていくので、治療の喜びもひとしおです。

夏のサンダルを履くにも意外と気になる爪病変、お困りの方はぜひご相談にいらしてくださいね。