紫外線治療(ナローバンドUVB)のお話
- 2023年10月15日
- 皮膚科
じゃん!この機械は皮膚トラブルの治療器です。
ナローバンドUVBとは?
ナローバンドUVB療法とは紫外線療法の一種で、副作用の少ない波長域「311~313nm」の紫外線を選択的に照射します。
つまり紫外線は広い波長域を含む光ですが、この治療器はやけどのリスクのある不要な波長をカットして、治療に必要でかつ安全を考慮した狭い波長のみに絞った光を当てる機械なのです。
昔から、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の患者さんは、夏に海水浴に行くと 一時的に症状が良くなることが経験的に知られていました。これは海水につかって良くなったのではなく、日光に含まれる紫外線を浴びることでアトピー性皮膚炎、尋常性乾癬が良くなったのです。このことを利用したのがこちらの機器による紫外線療法ですね。
なので、日光浴のように特に痛くも痒くもなく、数分この機器の前でじっと患部を光に当てるだけで治療できます。
かゆみなどの皮膚の炎症が改善するメカニズム
(難しい話を聞くのは面倒な方はスルーしましょう。)
1)T細胞に対する効果
紫外線療法の作用機序は主に以下の4つです。
- サイトカイン・ケモカインというからだの細胞から放出され病気を抑えたり、悪くしたりする物質へ影響を与える。
- 接着分子という細胞と細胞をつなぐ物質への影響を与える。
- アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の病因となる“問題のあるT細胞”のアポトーシス(細胞の自殺)誘導を誘導する。
- 病状を抑える制御性T細胞を誘導するがあります。このうち③のT細胞のアポトーシス(細胞の自殺)誘導する。
2)表皮内神経線維に対する効果
重症のアトピー性皮膚炎や、長期化して難治性となった慢性湿疹、自家感作性皮膚炎(全身性の湿疹)では、頑固なかゆみに対して抗アレルギー剤の内服が効かなくなっています。かゆみを感じる知覚神経の神経線維が皮膚の表皮と真皮で増えるためです。
健常者では、神経線維は表皮-真皮境界部のみに存在します。ところが、重症のアトピー性皮膚炎、難治性慢性湿疹、自家感作性皮膚炎の方では、かゆみで皮膚を掻き破ることを繰り返すことで神経線維が伸びて表皮上層まで侵入して数が増えています。これに乾燥、発汗、衣類の刺激などの外的な刺激が加わると神経は簡単に反応してしまい、強いかゆみを感じるのです。この状況が続く限り、かゆみ→掻破→神経線維の増生→かゆみの増強→さらなる掻破と悪循環が続いていきます。紫外線治療は、この増生した神経線維を減らして、表皮へ侵入を押させて、ステロイド外用剤、抗ヒスタミン内服剤・抗アレルギー内服剤などの基本的な治療のみでコントロールできるかゆみへと戻していきます。
このような症状にお悩みの方に効果的です
- アトピー性皮膚炎
- 尋常性乾癬
- 掌蹠膿疱症
- 尋常性白斑
- 円形脱毛症
それ以外にも塗り薬や抗ヒスタミン剤の飲み薬だけでは、痒みが十分にコントロールできない方。
妊婦さんやお子さんにも安全に受けていただくことができます。
起こりうる副作用
比較的副作用が少なく安全性の高い治療ですが、施術後に赤みや色素沈着といった副作用が発生する可能性があります。
- 肌の赤み
- 日焼け
- 色素沈着
- 肌のほてり
- やけど など
必要な通院頻度、回数、金額について
週に1−3回程度の照射が必要になります。効果実感は数回程度からとなりますが、白斑など疾患によってはもう少し回数が必要な方もいらっしゃいます。
頻回の通院となる方も多いので、当院では少しでも通院いただきやすいように、再診かつ紫外線治療専用の予約枠(ファーストパス的な笑、優先予約)を設けております。ネット予約も可能で、学生さんなど平日受診が難しい方には、土曜の午後もわずかながら枠がありますのでご利用くださいませ。
費用負担は、処置料として
皮膚科光線療法(中波長紫外線)340点
自己負担は3割の方で1,020円、1割の方で340円となります。