大阪府高槻市の保険皮膚科と美容皮膚科のハイブリット診療を行うあゆ皮フ科クリニックの院長菊澤亜夕子です。今日は前回のワキガ治療のお話に続いて、具体的な内容について綴ってみます！

お写真をご提供いただきました患者さんには心よりお礼いたします。

実際の手術の流れ

①マーキング

まずは汗の出る範囲を同定します。また手術の際にハサミの挿入口となる部分にマーキングをします。当院では術後の傷あとに配慮して、とにかく傷の大きさを極限まで小さくするように配慮しております。ここまで配慮できるのは通常の皮膚を反転させて行う方法から進化させた特殊な技法で行なってる故ですが、その方法についてはここでは割愛します。手術をお受けになる方には、手術法の説明の際に細かくお話しさせていただきますので聞いてくださいね。

②消毒＋麻酔

範囲が定まりましたら、消毒を行い、広い範囲でパーンと盛り上がるくらいに麻酔をたっぷり行います。黒い印の範囲は汗の腺が密集してるエリアなので、2回りほど広い範囲に麻酔します。カテラン針という特殊に長い針を用いて何度も針を刺さなくて済むように工夫しております。またゆっくり麻酔を注入することで少しでも痛みの少なくなるように配慮もいたします。

③アポクリン腺の除去

麻酔が効けば、全く痛みのない状態での手術が可能です。麻酔の効果を確認してから、メスで切り込みを加え、医療用のハサミを挿入して、細かく丁寧に匂いのもととなるアポクリン腺を除去していきます。下手に周囲組織にダメージを与えると腫れたり、痛みが長く続いたり、痺れ感が強く残ったりするので、正しい層で最小限の操作で皮下組織にアプローチしていくことがポイントですね。私の手術では大抵出血も少なめです。作業が終わると写真のように薄っぺらい皮膚になります。これも行きすぎて薄くしすぎると血流不全で皮膚が壊死となり、治癒に時間がかかり傷跡の問題にもなるので最大限の注意を払う必要があります。

皮膚の裏はこんな具合です。

④洗浄

皮膚の下の組織を生理食塩水で十分にすすいで、綺麗にします。大きな出血がないかも確認します。機器を使用して止血作業をするケースもたまにありますが、止血作業までしないケースがほとんどです。

⑤ドレーンの挿入と糸固定

最後に傷口を縫い寄せ、一度引き剥がした皮膚を脇の皮下組織に貼り付けるように、糸で固定します。アンカリングと言います。また血溜まりができないようにドレーンという細いストローのような管を挿入します。

⑥俵ガーゼで固定

最後に傷に軟膏を塗って、大きな俵型のオリジナルガーゼで圧迫して固定し、包帯保護で終了です。前開きで袖を通すタイプのお洋服、パーカーなどを着ていただき、三角巾にて腕を安静に保ちます。

目安の時間

当院では片側45-60分程度、日帰り

術後の診察と安静

翌日：ドレーンを抜きます。まだまだ三角巾固定の安静。
1週間後：傷口をチェックして抜糸。シャワーの許可。自宅でのケア方法を指導。ちょっと安静度は緩めますが、基本まだ腕の安静が必要。
2週後:傷チェック。傷のトラブルがなければガーゼ保護も終了。安静の制限解除。腕は自由に動かして大丈夫です。

ただし術後の指示については、状況によって変わります。

ダウンタイム

腫れたり、ちょっと痺れたり、痛みがあったり、１週間程度不便です。腕を上げたりは２週間程度制限がかかります。この安静による活動制限はこの手術の大変な点にはなります。

合併症

創縁壊死、傷跡（プリーツ、色素沈着など）、二次感染、しびれなど

術後写真

術後1ヶ月の経過写真です。テープ固定を強固にするため一部テープかぶれを生じておりますが、傷口は矢印に示す部位になります。傷跡の具合については個人差が割と大きく、凹凸が生じたり想像以上に見た目に傷が目立つケースもございますため、その点はご理解いただいての手術になります。やはり傷跡の問題が完全には切り離せない手術であることが一番のデメリットです。

費用

保険適応なので、片脇の手術代¥20,000程度+診察代、処方箋代、加算などが加わります。もちろん、大阪ではこども医療証があれば基本¥500となりますし、公費の対象です。

予約について

手術については医師の時間枠を長く抑える必要がある、また勢いで手術するよりは説明を聞いて十分に検討していただきたため、当日の施術は基本的には行なっておりません。遠方の方でどうしても当日を希望される方については、予めお電話にてお問い合わせいただきたと思います。小さな個人クリニックゆえ、当日キャンセルなどの影響がとても大きく、私の心と全体の診療に響きますため、予約金を頂戴しておりますこともご理解いただけますと助かります（予約金については手術時に返金します）

その他、わかりにくい点については、受診時に何なりとご相談くださいませ＾＾ご来院お待ちしております。