やけどは受診すべき?綺麗に治る?やけど跡・きずあとの治療は?|あゆ皮フ科クリニック|高槻市の一般皮膚科・小児皮膚科・皮膚外科・美容皮膚科

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やけどは受診すべき?綺麗に治る?やけど跡・きずあとの治療は?|あゆ皮フ科クリニック|高槻市の一般皮膚科・小児皮膚科・皮膚外科・美容皮膚科

やけどは受診すべき?綺麗に治る?やけど跡・きずあとの治療は?

高槻市・茨木市の境界にあります、あゆ皮フ科クリニック院長の菊澤亜夕子です。8月は、子供の夏休みでお弁当や早起きから解放されて、張り切ってブログを高頻度に更新しましたが、9月がきてしまったな・・と思いながら今日は書いてます。

先日火傷で受診された方に、「受診はもっと早い方が良かったのか?」「今回のはやけどは本当に受診した方が良かったのか?」「次の火傷は受診すべきでしょうか?」などと質問をお受けしました。その場での回答にとても困りましたが、その理由は、やけどは「範囲」「深さ」「年齢」「持病などの背景」によっても対応の必要性も変わるため、十把一絡げにやけどの受診の必要性について、一言でお伝えするのは難しいなと思ったためです。とりあえず自分で判断がつかなかったら来てもらうといいですよ、と簡単に済ませかけましたが、ちょっとここでお話ししてみようかと思います。なお今回は、クリニックで対応する頻度的な問題から重症熱傷、低温熱傷、化学熱傷の話は除いた、頻度の高いフツーのやけど、のお話です。

『やけどの重症度』を決める要素

やけどの重症度は、①やけどの範囲と②やけどの深さが重要な要素になります。

腕全部とか範囲が広かったり、気道が含まれるような顔全部なんかの場合はその時点で重症なので、入院施設のある救急病院が望ましいでしょう。⇩のような感じは重症なケースです。

あたらしい皮膚科学 第3版 より写真の引用

やけどの傷跡に直結する『やけどの深さ』を決める要因

やけどの深さは①どの程度の熱さに②どのくらいの時間接触したか、で決まってきます。つまり、めっちゃ熱いやつに、めっちゃ長いこと触れたらひどい火傷ということ。逆に、そこまで熱くないやつに、ちょっと触れたのは軽いってことになります。

やけどの深さと傷跡について

やけどの深さは医学的に大きく4段階に分かれており、浅くて症状の軽いⅠ度〜深くて症状の重いⅢ度まであります。深さによって予後が大きく変わるので重要です。

Ⅰ度熱傷
赤い、腫れるといった症状までで、水膨れにならない。表皮という皮膚の一番浅い表面的な部分のやけどなので、数日で治ります。多少の色跡がしばらく残っても一生涯の傷にはならず完全に治ります。

Ⅱ度熱傷の浅め(SDB:superficial dermal burn
赤く腫れて薄い水疱が形成される、もしくはベロッとめくれて表面がじゅくじゅくするビランを形成する。表皮の下にある真皮というレベルの浅い部分までのやけど。皮膚のじゅくつきが塞がるまでに2週間程度。傷が閉鎖した後に炎症後紅斑や炎症後色素沈着、炎症後色素脱失(色抜け)が出ても、ゆっくりと回復し、最終的には傷跡はあまり残らないことが多いです。⇩

あたらしい皮膚科学 第3版 より写真の引用

Ⅱ度熱傷の深め(DDB:deep dermal burn
水疱が形成されます。水疱が破れたところや水疱の底は、赤より白っぽくなってる状態。真皮の深い部分まで及んだやけどで、針でつついても痛くなかったり、出血もないような状態。範囲によりますが傷が閉鎖するまでに4週程度。軟膏治療である程度回復する場合が多いですが、範囲や関節などの部位によっては手術をすることもあります。瘢痕という生涯の傷跡を残す可能性があります。⇩

あたらしい皮膚科学 第3版 より写真の引用

Ⅲ度熱傷 
水疱はなく、炭化して真っ白だったり、褐色だったり。真皮全層を超えて、脂肪に及ぶような最も深いやけど。痛みの感覚はありません。軟膏治療では皮膚の再生は得られず治りませんので、手術による壊死部分の掃除(デブリードマン)や欠損した組織を新しい皮膚で覆う皮膚移植が必要になります。

 

 

軽いⅠ度やひどいⅢ度は、見た目や状況的にすぐに判断できますが、それらの間くらいの火傷の場合は、実は初見ですぐに深さや予後を判明できないこともあり、2週間くらい見極めに時間がかかることも少なくありません。経過を見せてもらうのは、その意味があります。意外と深くて、手術が必要かどうかなんかも2週間くらいの間に見極めております。

大体クリニックで扱うのはⅡ度まで及び、範囲が広すぎないケースです。Ⅱ度熱傷深め〜Ⅲ度で範囲が広くなると、水分の漏出も激しく、点滴などの水分補給が必要になったりという全身管理や、皮膚の移植などの手術加療が必要になったりで、入院施設での治療が望ましいです。頻度も少ないですので、今回はその重症の火傷については割愛してます。

やけどしたら、とりあえずの対処は?治療は?

まずは冷却30分。とにかく流水なりで冷やして消炎鎮痛ですね。

初期で、比較的浅く、赤み〜浅めの水疱の時は、1-2日の間はステロイドを用います。以前ちゃんと説明せずにステロイドを出したらヤブ医者認定されてしまいバイト先のクリニックに厳しいGoogle口コミでの評価をいただき⇩、バ先に大変申し訳なく思ったものですが、もう10年以上前から初期のやけどにステロイドを使うのは当たり前です。

吹田駅前スキンクリニックの、私が起こしてしまった消えることのないGoogle口コミ。今も申し訳なく思ってます。

水疱の蓋もとってもらってないと口コミには書かれてますが、水疱の蓋はよほどぐちゃぐちゃに汚くなって、ばい菌がつきそうなくらいでなければ、残しておくのがいいです。天然の被覆材と言われて、自然に剥がれ落ちるまで残しておくと痛みも少なく、傷も癒してくれるためです。火傷の治療も時代によって変わるので、後医の先生とは違ったようですが、現在のスタンダードは消毒なしで洗浄、早期の浅いやけどはステロイド、そして湿潤環境です。ただしキズパワーパッドは滲出液が多いときは注意が必要なので、できるだけオールマイティな軟膏ガーゼで湿潤環境を整えるように推奨しています。

また深めの水疱をきたしていたり壊死となるような深い潰瘍に至るレベルの時は、二次感染といって、後からばい菌が傷につくのを予防するのがとても大事。消毒なんかは皮膚が痛むので不要ですが、とにかく洗い倒す、これですね。風呂場で泡石鹸つけて、とにかく洗う。消毒なし。あとは深そうな時や感染しそうな時はゲーベンクリームなどの抗菌効果の高い潰瘍治療薬を用いたりもします。傷の具合で使用する軟膏はいろいろなので、診察の時に説明してます。

命にかわかるほどの重症でなくても、早く受診するメリット

①見た目の回復も早い

軽傷であっても、赤みや腫れが早期のステロイド外用剤での対応で、炎症が早く引く、強いては茶色い色あともそれだけ短い期間で済むので見た目の回復が早い。色味残したくない方は早めにいらしてくださいね。

②ばい菌(細菌)感染を予防できる

適切な処置方法や、外用剤の治療により、二次的なトラブルを回避できるので痛い思いをしなくて済んだり、傷の悪化を防げます。

③跡形が最小限にできる

怪我もそうですが、Ⅱ度以上の傷、特にDDBの場合は、生涯の傷を残す可能性が高くなりますが、如何に早く傷をふさぐか(上皮化させるか)が最終的な傷跡の着地点に大きく影響します。傷が閉鎖するのに時間がかかってしまうと、傷が盛り上がる瘢痕のリスクが上がります。一方で適切に洗浄、軟膏処置を行うことで早期に閉鎖させ、傷跡を最小限にさせることができます。赤くえぐれた傷や赤い肉のある傷(赤色潰瘍)には成長因子が入ったフィブラストスプレーを使います。b-FGFという成分で美容領域では凹みをふっくらさせる治療として用いて、皮膚の中に注入するような適応外使用によるしこりなどのトラブルがたくさん発生して問題になっているあれです。適正使用すると非常に有用な薬であるのは間違いありません。やけどや怪我による傷にフィブラストスプレーを塗る分にはしこりのリスクは全くありませんし、傷の治りを促進するばかりではなく、傷が治った後の皮膚の柔らかさなんかも向上するとっておきの成分だと思います。

④専門家による重症度の判断

関節などの機能的な問題が生じる部位であったり、範囲によっては手術の必要性についても判断もします。

やけど跡の治療

色素沈着の治療

茶色い色あとが残ったら心配ですよね。顔は比較的に治りやすいですが、見える部位で気になるし、、また見えにくいとはいえ足は最も治るのにとても時間を要しやっぱり気になるものです。美容的な問題なので保険適応の治療はありませんが、美白外用剤を含めた美容ケアについては治療が可能です。実費にはなりますが、もう跡形だけで皮膚科の治療は終わり、となった方も跡形の心配のある方はいつでもご相談ください。

瘢痕の治療

盛り上がった赤み、硬さなど、肥厚性瘢痕になった場合は、塗り薬、貼り薬、飲み薬、ステロイド注射などで治療します。拘縮と言って可動域の制限が生じた時には手術が必要なこともあります。

 

当院では、赤ちゃん、子供、もちろん大人も高齢者の方も、通院できる程度の範囲のやけどであれば初期対応から、やけどが落ち着いたあとの、やけど跡、色素沈着などの見た目の問題まで対応しております。重症で入院や当院でできない手術が必要と判断しましたら、基幹病院を紹介いたします。

結局のところ、受診の判断については難しいかもしれませんが、とりあえずきていただいて大丈夫です。早期に対応することで、できるだけ傷跡が最小限になるように、二時的なトラブルを回避できるように対応しますね。