アトピー性皮膚炎は見て、触っての診察(触診)大事にしてます〜虫刺されかぶれには強いステロイドを使うけど、アトピー性皮膚炎では強いステロイドを極力使いたくない理由
- 2025年9月10日
- アトピー性皮膚炎
高槻市・茨木市にあるあゆ皮フ科クリニック院長の菊澤亜夕子です。ご存知のように院長監修ではなく、いつも院長自ら執筆してます。
最近小学生の検診の際に、聴診器を直接胸に当てるのを嫌がる親御さんがいるというニュースを見て、私も診察のたびにやたらと服の中に手を入れてまで皮膚を触るので、今日はその理由について、言い訳←してみようと思います。
これは2024年のニュース これ見た時もちょっとドキッとした・・汗。私もいつの日か逮捕されませんように・・
当院にアトピー性皮膚炎等の皮膚疾患で通院されている方、特に光線療法などで、毎週のようにきてくださる方はよくご存知だと思いますが、私めちゃくちゃ触診します。
毎回あちこち体を触られて嫌だなとか、服の中に手を入れてまでとか、汗かいてるのとこ触ってくる・・とか不快な方もまあまあ多いと思うのですが、通院してくださる方は、ここはそういうクリニックだと許容してくれてると解釈して、毎回断りもなく触診してしまっていることを、ここで改めてお詫びしておきます。
皮膚科ではあまり血液検査しない理由
内科だと血圧だったり、肝臓の値だったりを測定する機器の値や血液検査で判断することが多いと思いますが、一方で皮膚炎の評価はまず見た目、そして手触りなんですね。アトピー性皮膚炎の病勢を評価するのに血液中のTARCなんかのマーカーもありますし、昔からLDHや好酸球といった数値も病勢の指標として扱ってはいますが、見て触ればある程度わかるのに毎回血液検査するほどでもないですし、よほど重症だったり、逆にある程度見た目、触診での評価で調子がいいのに、再燃が多い場合に、隠れ炎症(sub cliticalな変化)があるのかなということで血液検査をすることがありますが、やはり血液検査は比較的稀にしか行いません。
知っておいてほしい皮膚炎の3大指標
皮膚炎のわかりやすい3大指標①赤み②ぶつぶつ・ガサガサと触れる③痒みです。逆に皮膚炎の正常化の3大指標は①赤くない(茶色かフツーの皮膚の色)②ツルツル③痒くない。これです。
①皮膚の赤さ
もちろん見た目で赤みの程度を判断します。そう視診も大事。だから服脱いで見せてもらいます。特に初診の時には、患者さんが腕だけって申告してるのに、お腹も背中もみます。皮膚の炎症や痒みが当たり前になっているが故に、自覚症状がなく、患者さん自身はフツーの皮膚と思っていても、実はすごく炎症があって、そこも治療することでうんと楽になって、あー今まではフツーじゃなかったんだと後になって気づかれるケースも少なくないからです。
②続く触れた時の感触
ごわごわ、ざらざら、ガサガサ、カサカサ、ツルツル、しっとり、もっちり、こういう手の感覚も炎症の評価としてめちゃくちゃ大事なんです。皮膚科医の頭の中では、触った感じで、炎症細胞がどの程度浸潤してるか、みたいな細胞レベルつまり組織のイメージまでわかせています。クリニックで皮膚を切って検査をすることはめっきり減りましたが、基幹病院で研鑽をつんでいた時は、基本小さなクリニックで対応が難しいような診断が難いケースや、治りが悪いケースなど何らかの問題をはらむ症例が多いので、それはもう毎日のように皮膚生検と言って、皮膚を切ってその皮膚組織をプレパラートにしてもらって、顕微鏡で見て、どんな細胞が、どのレベルの層まで浸潤してるのかな、なんていうのを見ては検討を、数えきれないほどに繰り返してました。ですので無意識にその経験も生かされて、見てかつ触ってその皮膚の中の組織の状態までイメージするのです。ただの趣味で触ってるのではなくて、そういう見ただけではわからない炎症まで触ることで評価しています。皮膚の赤みが取れて、パッと見、綺麗に治ってそうに見えても、触ってツルツルでないときは、皮膚の炎症あり!治ってないの評価です。また炎症の程度も皮膚の厚みなども鑑みて、軽いなりひどいなりの判断をしてます。だから許して触るのを、という話です←
③痒みの有無
もちろん痒みの程度も大事です。これは患者さんにしかわからないので、かゆいですか?10段階でいうとなんぼくらいの痒みが残ってますか?と時々お伺いしてます。
それらの評価に基づいて、外用剤のコントロールを行ってます。5ランクあるステロイドの強さの調整であったり、塗る頻度も考えます。毎日なのか、1日おきなのか、週に1−2回でもいけそうなのか。またノンステロイドと言われる抗炎症の力はちょっと弱いけれど、長期的なステロイドの副作用である、皮膚萎縮などを回避するために使うノンステロイド(プロトピック、コレクチム、モイゼルト、ブイタマー)の導入を検討したり、いよいよ保湿剤のみでもいけるかな、なんて考えたりもしてます。
虫刺されやかぶれは強いステロイドをサクッと使う
基本の考え方として、虫刺されや接触皮膚炎であるかぶれなど、原因がはっきりしていて、原因を取り除けるものに関しては、治療は短期に終了するため、ガツンと強めのステロイドを使います。1週間最強ランクのステロイド使っても、基本何も副作用はありません。(ニキビが悪化するとか感染病変などの例外は除きます。感染が心配で予測しうる場合は、感染が一時悪くなるかもしれないけど、それは後で治療するので先に皮膚炎のコントロールを行うなど説明してます。)
アトピー性皮膚炎には慎重にステロイド外用剤を選択する
一方で、遺伝や体質的な要素が強く、治療が長引くことの多いアトピー性皮膚炎をはじめとした慢性皮膚疾患の治療は、いかにステロイドを弱めたり、使用頻度を減らすかがとても肝になります。副作用もそうですし、ステロイドもだんだんと切れ味が落ちるので、極力病勢が落ち着いたらステロイドを弱めて、ノンステロイドに移行したいのです。ただし、炎症があるのに、慌ててステロイドを弱めたり、ただただ怖がってステロイドを薄付けしたり量を減らしすぎたりすると、結果的に炎症が長引くので、治療が前に進みません。ですのでステロイドを使う限りは、適正量を使っていただき、その上で外用剤の種類やその使い方の匙加減を毎回毎回診察で検討させていただいてます。
触診のお願いとお礼
私の手。月に1回はネイルサロンでケアしてます。実は見た目が最優先なら、もう爪を少し伸ばしてキレイな感じにするんですが、私はどちらかというと、見た目より患者さんの皮膚を傷つけないようにする目的でケアしてます。爪は短く、先端は丸くして、触診の時に皮膚を傷つけないように、診察時の最低限のマナーとして意識してますので、よりよい診療を行うために、触診についてご理解いただけますと助かります。ただし、どうしても触られたくない場所がある時、許容できない時は、必要に応じて触診の場所を最小にしたりと考慮しますので、ぜひお申し出ください。汗を気にされる方もいらっしゃると思いますが、私の方は全然気にせず、ただただ皮膚の炎症を評価したいという真っ直ぐな気持ちで診察してますので、できるだけこの人(私)は汗に対する意識が乏しいと思ってスルーしてくださると嬉しいのですが・・何かとご無理申しますが、よろしくお願いいたします。
追記
ただ先日、いつも通院くださる女性の方に、「先生は毎回あちこち触ってちゃんと診察してくれて信頼できるので、美容治療もお任せしたいと思った」という話を、美容治療のゆったりした時間のある時にお聞かせくださいました。医師冥利に尽きます。いつもどこかで何となく申し訳ないなと思いながらも、忙しさにかまけて、触りまーすとかいうお声がけまで省略しつつ、自分の診療スタイルを貫いてしまっていたので、ホッとしました。不快な方への配慮ももちろん忘れてはいけないなと思う傍ら、こうしてご理解いただける方が通院下さってる方には多いのだろう、と俄然前向きな気持ちになったものです^^ うれしいお声がけ、ありがとうございました。