単純ヘルペス(口唇ヘルペス)の治療であるPITをご存知ですか?
- 2024年1月23日
- 皮膚科
メディア取材のお知らせ
先日、当院のブログがメディアで掲載されました。レバレジーズの編集者さん打診してくださり、掲載してくださりありがとうございます。HPも全部自分で文章作り上げるしかない会社に頼んでしまって←ヘロヘロでして、どなたかが編集してくださり、構成チェックだけだとこんなに楽なのかと思いました笑
==============================
【タイトル】看護部・院長ブログ紹介_vol.47
【記事URL】https://kango-oshigoto.
==============================
常々当院はブログと親和性の高いクリニックだなあと感じています。ブログ読んできたよーだとか、通院してる方でも会話の中で、あ!その話知ってます、と実は読者さんだったり、ということもあり嬉しく感じています。
いつも短い診療時間で全てをお伝えすることはできず、早口で言いたいことを詰め込んでしまうので、患者さんからすると、緊張しながらやっとこさ受診したドクターの前で、100%漏れなく話聞くのはなかなか難しいですし、そこに初めての話でかつ、大量の情報量とくるとね・・結局、この先生はよう話す人やなーくらいしか印象として残らないものだと思います←
なので、できるだけ予め知識を入れておいてくださると、私の人となりもちょっとは分かっていただけるかもしれないし、病気や美容の情報もより診察時にスムーズに汲み取っていただけて、双方良し!だなと思います。よってアウトプットにもなお力を入れて行こう!と、少なくとも今は意気込んでます。いつまで続くかはわかりませんが笑
最近、美容皮膚科の内容続きだったので、今日は皮膚病(保険適応)の内容についてお話ししてみます。
単純ヘルペスはご存知でしょうか?おそらく持病としてお持ちの方はご存知でしょうし、皮膚病って4000種類とかありまして、皮膚科15年していても学会で初めて知る病気が毎回あるくらい、たくさんの種類の病気があります。ただその中でもヘルペスは、適当ですがトップ30位には入るだろう有名な皮膚病の一つではなかろうかと思います。
単純ヘルペスの症状
ヘルペスの型の話などすると長くなるので割愛します。その単純ヘルペスの中にも部位によって、口唇ヘルペスだとか、陰部ヘルペスだとかありますが、お尻にもできるし、手にもできるし、実は割とどこにでもできますが、やはり口唇は頻度が高い部位になります。
(症状の経時的変化)
口唇単純ヘルペスは、こんな具合に唇やその周囲に赤いぶつぶつ(紅色丘疹)、赤い腫れ(浮腫性紅斑)、赤く縁取りのある水脹れ(紅暈を伴う小水疱)を生じるます。非常に特徴的な外観を示しますので、大体皮膚科医がみるとわかりやすく一発診断がつきます。まれに典型部位でなかったり、皮疹が特徴的でなく迷うケースでは、迅速キットを使って、水膨れやジュクついた皮膚(びらん)を綿棒でコシコシ擦って、その液で検査します。気持ちよくはないけど←一瞬ですし、そこまでは怖くない検査です。
そして単純ヘルペスは自覚症状として、ちくちく・ピリピリとした痛みを伴うことも多く、違和感もあり不快感の強い病気です。
ヘルペスを発症する機序
ヘルペスは非常にありふれたウイルスなので、子供の頃に感染して、そのウイルスが神経節に留まり、免疫力が落ちた時に、皮膚まで出てきて症状を生じます。
1−2週間程度の経過で、かさぶた(痂皮化)となり、治癒していきますが、やはりしつこく神経に潜みますので、また同様に折をみてウイルスが元気になると(再活性化すると)、また皮膚に出てきてしまうのです。これが再発ですね。
再発の頻度ですが、数年に1回の方もいれば、年に2−3回、繰り返しやすい方では、毎月症状が出る方もいらっしゃいます。
単純ヘルペスは塗るより飲むが効く!そして気づいたらさっさと飲む!
そこで単純ヘルペスの治療なのですが、基本事項として
①ヘルペス治療は外用剤による塗る治療より、飲む内服治療が効果的
②発症後、とにかく速やかに飲む
これは治療を考える上で、とても大切なことです。
①についてですが、皮膚科の領域においては、飲む方が効くもの、塗る方がきくものさまざまあります。できるだけ診察時にも、「大変やと思うけど、これは塗るのが効くから、一応飲み薬出すけど、忘れても自分を責めてはいけませんよー」だとか、「塗り薬は呪い程度です、すいませんけどちゃんと飲んでくださいね」なんて話をよくしてます。
(余談)人生優先順位って大事ですからね。全部完璧にこなせるスーパーマンなんて方は珍しいと思ってます。私は全部できない典型ですので、自分に症状があったらいざ知らず、ましてや忙しい日常で子供のかゆいなんて、やっぱり言ってくれないとすぐ忘れちゃうので、飲んで塗って完璧に治療するなんてまあ無理です笑。ということで、ヘルペスに限らず、治療の優先度もできるだけお伝えするようにしています。
②について。ヘルペスウイルスは増殖する勢いがあるうちに、飲み薬でそのグアーーーーーっと生きおくよく増殖するウイルスを抑え込むことが重要で、48時間以内に内服するのが良いとされていますが、もちろん早いに越したことはありません。
PIT(Patient Initiated Therapy)とは?
そもそもヘルペスが出るときって、疲れてたり、仕事が忙しかったりという背景があることが多いので、そんなさっさと飲むのが大事ですとか言われても、結局待ち時間のあるクリニックで、待たされたり、気づいたのが土曜午後だったら無理やんーなんてことも多いかと思います。
そこで登場したのが、薬をもらっておいて、皮疹が出るより先に、“なんかむずむずするぞ、これはもしや来たか・・”という前駆症状のタイミングで、内服する治療があるのです。
Patient Initiated Therapyです。簡単にいうと、医師による診断に先行して、患者の判断でサクッと飲んで、症状を軽く抑えよう!もしくは、違和感だけで皮膚症状が出る前に治してしまおう!という治療です。
一度ヘルペスの診断を受けた方限定にはなりますが、症状のない時に受診いただいて、あらかじめ処方しておき、発症に備えておくのです。
しかもです!毎回症状が出てから受診すると5日間お薬飲んでくださいと言われて、毎日毎日飲まないといけないのですが、このPITという自己判断で服用する治療は、海外では1 day treatmentとも言われ、1日飲んでおしまいです。毎日毎日、嫌な気持ちになりながら忘れないように飲むのと違いたった1回です。
というわけでPITは、ヘルペス持ちの方には、かなりQOLに貢献できるタイプの治療だと思ってますが、意外とまだまだ知られてないなという印象です。
PITとして使われるお薬は2種類
アメナメビル=アメナリーフ®という抗ヘルペス薬の場合発症後6時間以内に1シート6錠を一気に飲んでしまえばそれで終わりです。
もう一種類保険適応の薬であるファムシクロビル=ファムビル®もありますが、こちらは12時間空けて2回内服になります。
アメナリーフは、携帯に便利なこの紫のケース付きで、処方させていただきます。おしゃれかどうかだいぶ微妙なラインではありますが(マルホさんごめん)、シート一枚持ち歩くと錠剤がポーチの中でとびてているなてこともよくあるので(私だけか←)、保管にちょうど良く、気づいたらすぐに飲めるのでおすすめです。
当院に来れない遠方の方であっても、ヘルペスでお悩みの方に、この記事が少しでも参考になりますと嬉しいです。
補足
口唇以上にさらに辛いかもしれない陰部の再発性ヘルペスについては、抑制療法という、予防的な治療もございますので、それについてもまた折をみてご紹介いたします。