婦人科形成のお話その11 〜私の工夫〜 | 溶ける糸 | ボンド | 名医 | 口コミ | 怖い | 痛い|あゆ皮フ科クリニック|高槻市の一般皮膚科・小児皮膚科・皮膚外科・美容皮膚科

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婦人科形成のお話その11 〜私の工夫〜 | 溶ける糸 | ボンド | 名医 | 口コミ | 怖い | 痛い|あゆ皮フ科クリニック|高槻市の一般皮膚科・小児皮膚科・皮膚外科・美容皮膚科

婦人科形成のお話その11 〜私の工夫〜 | 溶ける糸 | ボンド | 名医 | 口コミ | 怖い | 痛い

こんにちは。大阪府高槻市のあゆ皮フ科クリニックの院長菊澤亜夕子です。今日は婦人科形成のお話、もう気づけば第11話になりました。小陰唇などの女性器の形状でお悩みでこのブログに辿り着いてくださった方には、ぜひこれまでのブログにも目を通していただきたいです!ですが、流石にこれまで10回分読んでねとは気軽に言いづらーい感じになってきました。

私は小さい頃から割と手先を使ったことが好きで器用かどうかは分かりませんが、自分が好きなことは熱中して細かな作業に没頭するタイプでした。ピアノも習字も残念ながら才能が垣間見えることすらありませんでしたが、工作教室トントン←だけは好きな習い事でした。それらの経験が生きてか死んでか知りませんが、手術やヒアルロン酸やボトックス注入などはとても好きな分野で、集中して緊張して取り組むその時間は貴重だなと日々感じています。小さな試行錯誤と工夫を積み重ねながら、日々技術の向上を目指すのは楽しいものです。

日常生活でもそんな具合で好きなこと興味のないことははっきりしていて、興味のないことはひたすら効率化を重視して楽できるように徹します。どうでもいい例えで言うと、日常で使うお箸は、全部同じものを買って、どの組み合わせにしても問題ないようにして、ザクっと同じ引き出しのトレーに入れてしまうという感じですね。家事全般はほぼ興味がなく、自宅は恐ろしいほどに効率的な家事動線やもろもろが仕組まれております笑

今日は写真がないので、以前作成した切り絵の一つでも出しておきます。

で、婦人科形成のお話に戻りますが、手術の中でもこの手術は特に私がこだわりを持って行っている手術です。

工夫ポイント①デザイン

同じ人が1人としていないとても個性のある部分で、同じ1人の患者さんにおいてもそのヒダの立体構造は、左右の形状がほぼみな非対称であり、故にデザインも様々に工夫できるので工夫を重なれば重ねるほどの美しい仕上がりになります。立体的な部分をこう切ってこう縫い寄せると、こう仕上がるみたいなものをイメージしてデザインを行っています。数をこなすごとに、イメージも湧くようになったものです。

工夫ポイント②切りこみ方

昔、外科の友人と話をした時に、切って縫うだけの手術やから〜というような意見を聞いた時に、なんか燃えるような気持ちになったものですが、『その切って縫う』という単純に聞こえる工程に奥深さがあるということですね。

まず意外と切るのが難しい。つまりデザイン通りに切るのが難しいのです。局所麻酔をすることで、ある程度腫れ上がる。そもそも部位的な特徴として、固定しやすい他部位の皮膚と異なり、ひだ状の構造であるが故に、ブラブラと不安定である。その自在に動く部位であることに加えて、麻酔でパーン膨らんだ状態のヒダ、かつそもそもフニャッとした柔らかい組織を、予定した通りの線で切り込む。そこにはメスに入れ方、切り込む角度が割と重要で、切り方次第で、ヒダの厚みに大きく差が出ます。薄くもできるし、厚みを残すこともできますが、それは切り込み具合のさじ加減になります。指の固定する位置、ひだの引っ張り具合、そんな要素でも結果は変わります。

工夫ポイント③止血操作、そのための事前準備

女性の外性器は柔らかい組織で、すぐ下に骨がなく、日常生活で動く部位のため圧迫して固定しづら場所です。ゆえに出血しやすいので、極力術中に血を止め切ってしまうことが大事です。(圧迫固定しやすい部位は、ある程度出血したまま終わってもガーゼで抑えて止めるので問題ありません。)ただ出血を無くそうとするあまり、切り口を焼け野原にしてしまうような血の止め方は組織が痛みますので、しません。ピンポイントで血を止める工夫も必要です。止血はエルマンのRFナイフという機器を用いて電気凝固による周囲組織へのダメージを少なくできるいい機器を用いております。そして実はこの止血作業の前段階として、患部への麻酔注射の打ち方が意外と大切であることに経験を重ねながら気づきました。麻酔の細い針で出血させないような層に、できるだけ最小限の針操作で行うと、皮下の出血や血腫ができづらく視野もよくなり、後の操作がスムーズで、止血操作も無駄がなくなり組織損傷も減るということがわかりました。

工夫ポイント④縫い方〜ボンド法をしない理由

当院では縫合する糸は、吸収糸、つまり溶ける糸を用います。なんでもかんでも皮膚の手術は吸収糸が良い訳ではなく、組織に緊張(引っ張られる力)がかかる部位においては、傷が引き延ばされないように、数ヶ月の単位で牽引力(傷を引き寄せる力)をかけたいので、溶ない糸を選択します。ところが小陰唇については、部位的に創部緊張がかかりませんので、牽引力は必要とされず、1ヶ月程度で糸は溶けて無くなって問題ないし、外縫いの糸も1週間程度で傷は閉鎖するので、さっさと溶けてなくなってしまって問題ないためです。そして色々試行錯誤を重ねましたが、患者さんにとっては糸を使わない接着用のボンドを使うボンド法のメリットが見出せることはありませんでした。他の術式を悪くいうつもりはないですし、ボンド法を売り込んで高いメニューとして提案しているところは、そのメリットを見出していることとは思いますが、私には患者さんへのメリットが見出せなかった理由もお伝えしておきます。下縫いをきっちり行いボンドで完璧にずれなく切り目の接着を目指すより、確実に糸を使って手作業で傷を1箇所ずつずれなく合わせる方が時間はかかれど間違いないように思うからです。かつ、溶ける糸で表縫いをするので、どの道抜糸もいりませんので、手術時間が多少長くなってしまうという以外のデメリットはないように感じてしまうのです。

ただ余談にはなりますが、〝私にとっては〟抜糸がないことは、実はデメリットが一つあります。抜糸がないということは、再診しなくても問題なく終わってしまう、つまり再診いただけないかもー泣、ということですね。術者としては試験結果を知りたいように、結果をみてちゃんと安心したい、結果のフィードバックで次の手術に繋げていきたいという思いはいつまで経ってもあるものです。溶ける糸だと遠方の患者さんは特に再診不要となりがちなのはちょっと寂しいものです。

手前味噌ですが患者さんに満足いただけるよう毎回工夫を重ねてます

手術は工夫を重ねるたびに、こだわりが強くなり手術時間が長くなる傾向にありましたが、最近は局所麻酔の工夫により痛みの緩和のみならず止血操作の時間が短縮され、また介助についてくれるナースの技術が格段に向上してきましたゆえ、手術時間は開院当時より短縮されました!ので、以前より少し患者さんのご負担が減ったのではなかろうかと思っています。とはいえ、いづれにしても当院では1時間を切るようなことはありません。ご理解いただけますようお願いいたします。

時々聞かれる再発しますか?に関してですが、こちらの手術に関しては、時間と共にまたたるみが生じて2度目を行うことはほぼありません、ないと言い切ってもいいくらいかもです。一生に一度の手術。必ずやご満足いただけるように、心をこめるだけではなく、経験とこれまで積み重ねたアイデアや工夫の集大成としての手術を提供したいと思ってます。

今日は文字の羅列になってしまいましたが、最後まで到達してくださった方ありがとうございます!