いぼ①ウイルスいぼ治らない?早く治す方法は?
- 2024年8月28日
- 小児皮膚科
こんにちは。高槻市のあゆ皮フ科クリニック、菊澤亜夕子です。一般皮膚科から、皮膚外科、美容皮膚科、婦人科形成まで幅広い診療を行っております。
いぼって一言で言ってもたくさんあるので、さあ特集でも組んでみようと思い立ちました。今日のテーマはいぼ、その①。子供のいぼの中でも最も多いウイルスいぼについてのお話です。
「いぼ」とは?
そもそもいぼとは?いぼとは俗語で広くさまざまな疾患を指します。
こちらの表は皮膚科のガイドラインを引用しております。年中、子供に最も多いいぼが、赤で囲ったウイルスいぼです。もちろん大人も罹患しますが。子供に2番目に多いのが赤の下線に示した伝染性軟属種つまり水いぼです、夏に多く見受けます。ウイルスいぼの中にもウイルスの亜型によって、実はとってもいろんなタイプがあります。が、治療はあまり変わらないので特に把握していただく必要はなさそうです。
これです!子供のウイルスいぼ。ちょーどお家で見つけました笑。皮膚科医の子供も例外なくウイルスいぼになります・・・・・・
ちなみに大人に一番多いのは、表の青で囲った脂漏性角化症と呼ばれるいぼ。老人いぼとも言われますね。また首などに多発する軟性線維腫、アクロコルドンとも言われますが、こちらもいぼの代表ですが、うつりません。また別の項目で詳しくお話しする予定です。
子供のタコ?はウイルスいぼ
子供の足のタコを主訴に受診される方は、大抵タコ(べんち)ではなく、ウイルスいぼです。子供には基本タコはできません。ウイルスいぼは、タイプにもよりますが、角層が肥厚して固くなるので大人のタコとよく間違われます。
「ウイルスいぼ」は治さないといけないの?
答えはイエス。基本的には積極的に治療しています。人にうつすこともありますが、どちかというと、自分の手足を含むあちこちにどんどんうつって、どんどん大きくなると治療に困難を極めるので、見つけたら早めに治療を開始しています。
個体の免疫によって発症のしやすがあるので、生活を共にする家族でも、全くうつらないことも多々あります。一方で、臓器移植の手術や、何らかの病気で免疫を抑えるお薬を内服していたりすると、とても重症化したり、治療に反応が悪く難治となるケースも少なくありません。
「ウイルスいぼ」はどんな治療があるの?
治療の一覧どどーん!!まだガイドラインの抜粋です。表がビジーすぎて嫌になりますね。こんなにいろいろあるんです、ということを示したいのと、効果やリスクの兼ね合いから決められる治療の推奨度がAからC2までありますよというのをご覧いただければと思います。
①液体窒素療法(保険適応)
この中でも実際に王道としてどこのクリニックでもまず行うのが、そう液体窒素による凍結療法。唯一の推奨度A、つまり最も推奨される良い治療なのです。
当院では、クライオプロという噴射式の機械で行っています。綿棒が良ければもちろん綿棒でも可能ですが、こちらの機器の方が威力を持ってしっかり当てられるので、多くの患者さんにこれを用いて治療しています。1−2週間に1回。詰めてきていただいた方が効果的な印象であります。
シューーっとマイナス200度近くの冷たい気体を数秒間を数回当てます。力加減は部位や大きさ、痛みの許容度に合わせて行います。あっというまに終わりますが、ドライアイスも一瞬触っても痛くないけど、ずっと触り続けると痛くなるように、こちらも時間が長くなると痛みにつながります。お子様の場合、怖がり具合、痛がり具合を見ながら、時に綿棒に変えてみたり、何かと工夫して当ててます。次来てくれなくなったら治療ができなくなって困るので、うまーいこと看護師さんがコミュニケーションをとってくれます。
当院独自のご褒美システム
そして『あゆせんせいとがんばろうカード』をスタッフが用意してくれています。受診して頑張って治療を受けれたらハンコを押していき5つ貯まったら、宝箱からカプセルが引けるという、手動ガチャガチャみたいなやつです笑 ご希望があればカードをお渡しするのでお申し付けください。年齢に制限はありません。
何回で治るの?
いぼ治療で最も多い質問がこれ。何回で治るか。もう神のみぞ知る・・です。いぼに自身の免疫が勝ったら治る!という感じでしょうか。経験的にこの場所のこのいぼのサイズでこの形状なら、⚪︎回くらいかなというのはありますが、外れることももちろんありますし、風邪ひいて急に治ったとか、体の何らかの免疫が働いて急な動きを示すこともあり、なかなか回数をお伝えするのは難しいです。スイマセン。
そのほかは補助的な方法として
②ヨクイニンという飲み薬(保険適応)
ハトムギの成分が入った生薬です。大人は1日18錠、子供は体格によりますので、数は決まってませんが1日9錠程度は飲んでいただきます。
お菓子とおもって、あー美味しかったボリボリと食べる子も時々います↑。甘くもなく、「美味しくないラムネ」とお伝えしています。一番の治療は液体窒素の治療ですので、飲み薬は強要させるほどではありませんが、ストレスなく飲めるようであれば、いぼが拡大傾向のある方におすすめです。
ヨクイニンは美肌効果があるとも言われ、エイジングケアとして使われることもありますが、大規模調査のエビデンスはないようです。
③サリチル酸ワセリンのつけ薬・スピールこうの貼り薬(保険適応)
単独の外用剤で推奨度の高い治療はなく、あくまでこちらも液体窒素の補助的な存在です。角質の肥厚が強いケースで使うこともあります。
④トリクロロ酢酸塗布処置(保険適応外・自費)
強酸による組織を腐食させることで改善させる方法。ガイドラインには推奨度C1として表記されますが保険が適応されません。しつこいですが、やはり液体窒素には劣るものの、私は有効な治療と考えていますので、液体窒素で難治な方や、痛みが怖くてどうしても液体窒素が難しいお子さんに自費で行っております。無痛です。周囲に腐食反応が生じるリスクがあるので、手足の角質が厚い部分に限定し適応を見極めてご提案しています。
チョンチョンと塗るだけで痛くないのが良いところ。
⑤いぼはぎ法・外科的切除(保険適応)
上記のどの治療も抵抗性である手足の難治なウイルスいぼについては、十分なインフォームドコンセントの上で、消極的にサージトロンを使用した「いぼはぎ法」も行います。手足以外で液体窒素には反応の悪そうなケースで、一回で取り切ってしまえるウイルスいぼにおいては適宜手術も行っています。
当院で主に行っている治療は以上ですが、そのほか各種外用剤や抗がん剤の局所注射などもあります。
最後にそのほかの治療として無料の治療を一つ紹介させてください笑
⑥暗示療法(無料)
JR總持寺駅のほど近くにある、疣水(いぼみず)神社で祈る。これはどうでしょうか。ガイドライン上は推奨度C2、古くから暗示効果が発揮されたことを思わせる報告は少なくないが、積極的には推奨されない、だそうですが・・笑
昔、神功皇后が三韓征伐の出兵前に、この「玉ノ井」の御神水で顔を洗ったところ、顔中に疣ができたそう。皇后は「これは神のおぼしめしである」と考え、男装して戦に臨まれ、新羅をくだし三韓を成敗しました。凱旋報告のため当地に戻り「玉ノ井」の御神水で顔を洗うと、疣はとれて元の綺麗な顔に戻られた。この伝承により「玉ノ井」の霊泉は古くからイボや吹き出物を取ってくれると知られるようになったらしいです。
老人いぼは、加齢性変化なので絶対祈願したところで、治らないと思いますが、ウイルスいぼは、時に、え?まじで?ほ?という驚きの変化があります。数えきれないほどのイボがいきなり完治したりを何回かみたことがあります。
外来で暗示療法なんて説明したら、完全に信用が地に落ちるので、黙ってますが、ちゃんとした治療を受けた上で、暗示療法もありかもしれませんね、笑。結果が出た方は教えてもらいたいです。
⑦その他、5FUという抗がん剤に用いる外用剤を応用する(自費で導入検討)、ビタミンD3軟膏、ステリハイドという滅菌用消毒薬(あぶないので導入予定なし)、ブレオマイシンという抗がん剤の局所注射(痛いので導入検討中)などの治療もございます。
まとめ
詰まるところ痛くもないし通院しなくても良い一発完治の塗り薬(ウイルス特異的な外用剤)はないんです。アトピーとか尋常性感染とかどんどん新薬出るのね。めちゃ効くやつ今もなおないんです。
日本皮膚科学会の治療指針にもこんなに多くの治療が試されるというのは、つまりとても難儀することがあるため、みんながあの手この手でいろいろな治療を試しているということです。
液体窒素数回でスムーズに治癒することもありますが、そうでないケースにおいても、液体窒素の当て方一つにも工夫したり、あの手この手を考えながら一緒に治療していきましょう。
そして治りますようにと気持ちを込めた液体窒素の処置をしていきます。いぼでお悩みの方、いつでもご相談にいらしてくださいませ♡