当院の水いぼ(伝染性軟属種)治療の方針と水いぼクリーム(m-BFクリーム)について
- 2023年12月20日
- 小児皮膚科
水いぼとは?
主にお子さんに多い、ウイルス性のいぼの一つです。接触により感染するもので、タオルの共用や直接触ってうつるタイプの感染症ですね。プールやお風呂のお水でうつることはありません。
こちらの写真の大きいものが割と典型例で、プリッとした白いドーム状の小さな膨らみです。実際には、一番左にある小さいプツっとしたレベルのできものを主訴に受診される方が多い印象です。体や、腕・下肢・陰部とどこにでもでき、基本的にはイボだけだと痛くも痒くもないことがほとんど。
水いぼの治療:取るか取らぬか!?
こちらは医師の中でも意見が別れるところ。私も若い時分は(って書くと、今はおばさんみたい・・泣)、経験が浅い頃は、1つでも100個でも基本は摘除!という教科書的な治療で行ってきました。白いプリッとした中にモルスクム小体というウイルスと変性した組織が詰まっているのでそれを水いぼ鑷子(せっし)という、専用のつまむ器具でちぎりとります。
ただ、とにかく取る!という考え方もある一方で、取らないという方法もあります。実際、皮膚科医VS小児科医、病院勤務医VS開業医など意見が別れるところです。
で、現在当院では、社会生活に支障をきたしていないケース、つまりは水いぼのせいで虐められる、水いぼのせいでプールに入れない、などの何らかの制約やデメリットがある場合を除いて、基本は摘除しないスタンスです。(ただし後に記載する、水いぼ+アルファの皮膚トラブルがあれば別です。)
ほっといても数ヶ月から1−2年くらいで自然免疫で治ることも多く、成人まで持ち越すことはほぼない、かつ、摘除するのは麻酔テープ貼っても痛いし・・という理由です。
夢の?水いぼ専用クリーム(m-BFクリーム)
で、取らない時は自費2000円+税にはなりますが、このクリームをご提案しております。
・朝晩2回、少し水いぼより広めに伸ばして塗布
我が子にしてみると、数日で赤く反応し(ウイルスの免疫反応ですね)、そのまま続けるとすーっと引いたという、めちゃめちゃエビデンスレベルの低い話ではありますが笑、そういう経緯もあり、導入しております。
何もしないよりは、塗って消退したらラッキー!くらいの気持ちで塗ってみると良さそうです。
銀イオンが有効成分で、副作用は稀ながらかぶれです。重篤な副作用はありません。
皮膚科メセンでの水いぼの注意点
①ベースにアトピー性皮膚炎を含む湿疹性の変化が伴っているかの判断
ただの水いぼだけというケースもありますが、実際にはアトピーや乾燥に伴う湿疹・皮膚炎がベースにあり、それにより皮膚のバリア機能が落ちて、ウィルス感染が拡大しやすい状態になっていることが少なくありません。私が、診察時にとにかく素手で子供さんの皮膚をあちこち触るのは、皮膚の炎症がないかを確認しているのです。(かわいいモチモチの皮膚を触りたいとかもありますが、そういう気持ちは我が子で満たしています笑)皮膚炎があると皮膚のざらつきが生じますし、大概ボリボリ引っ掻いていたりします。このサインを見逃さないのは、とっても大事なことです。だって痛くもない塗るだけの治療で治せる皮膚炎を放置して、水いぼがどんどん拡大してしまうのは、気の毒すぎます・・
というわけで、私が診察すると水いぼがあるのに、ウイルスに禁忌であるステロイドをあっさり出すのは、湿疹・皮膚炎の治療に重きを置いているからです。まずは湿疹・皮膚炎をきれいにしてから、本来の水いぼを炙り出して、取るか取らぬかについて改めて検討しています。基本は取らないといえど、毎回個数や部位を見ながら、どうしたらいいかしら?と考えてます。
②大人で多発したり、すごく難治でサイズの大きいレアケース
ベースに免疫力低下としてのエイズやリンパ腫など隠れていたりということもあるので気をつけて診ています。実際に16年も皮膚科医をしていると、水いぼからHTLV-1という特殊なリンパ腫を発見したケースもありましたが、非常に稀な話ですので、皆さんは心配しなくても良いです。
皮膚科って簡単そうで誰でもできそうで、時々内科や外科がついでに皮膚科を標榜してますし、特に昔は泌尿器科・皮膚科なども多かったようで、確かに8-9割は非専門医誰がみても問題なく解決するのかもしれません。ただし稀に見逃しがあるので、そこをしっかりカバーできる皮膚科医でありたいと常に思ってます。
あー今日は終始真面目な記事になってしまいました。きっと10人中9.5人は脱落しているだろうし、10人しか読んでなかったらひとりもここまで辿り着いてもらえなかったのだろうか、なんてしょーもないことを考えつつ終わりです笑
水いぼか、なんのいぼか、はたまた違うデキモノか・・そんなん知りませんけどって方を、温かくお迎えしてますので、難しいことは考えずに受診してくださいね♡
番外編
実は昨日の夕方から突如声が出なくなり、ヒソヒソ声による「囁き外来」を行ってます。
体も心も元気なので通常運転ではございますが、元気な声とうおしゃべりこそが取り柄なのに、声帯よ!明日こそ頑張ってもらいますので、ご不便おかけしますがよろしくお願いします。
診察終了後、患者さんに「お大事に!!」とか言っていただく次第で不甲斐ないですが、嬉しいです♡スタッフもどこから集めたのか大量にのど飴を診察室に届けてくれました。いつもありがとう。
こんなメッセージ入りの写真をInstagramのストーリーで流しています。24時間で消えてしまうので、院長なうに興味ある方、笑、お待ちしてます。