顔ニキビ、首ニキビ、頭ニキビ、皮脂過多、酒さでお悩みの方に対するイソトレチノイン治療ー症例写真ー
- 2025年9月28日
- 美容ニキビ・ニキビ跡
大阪府高槻市・茨木市のあゆ皮フ科クリニック院長の菊澤亜夕子です。当院ももうすぐ開業2年となり、ニキビも含めた慢性疾患に対して中長期的に経過を追わせてもらえる患者さんも出てきました。今日は重症難治性ニキビの切り札と言われるイソトレチノインについて症例写真を含めてお話ししますす。ただしあらかじめお伝えしておきたいことがあります。当院の治療スタンスとしては、なんでもかんでもニキビの方にはイソトレチノイン万能!と言うわけではなく、リスクはあるけれど有益性が上回ると言うケースを私なりに判断の上、患者さんのご意向と合わせながら慎重に導入しております。
イソトレチノインが推奨されるニキビのタイプ(私見)
最近はAIで書かれたブログも溢れ、チャットGPTでなんでも聞けちゃう時代なので、逆に教科書なんかには書かれてないような、毎日の外来診療の経験をベースにした、現時点におけるイソトレチノイン導入が推奨されるニキビのタイプについて述べてみます。かなり私見が入ります。
(イソトレチノインはビタミンA誘導体の一つですが、保険適応の薬ではないので日本のガイドラインには細かなイソトレチノインの適応については記載がありません。今後保険収載された折には、きちんと偉い方の教えや論文ベースした内容を記そうと思います。)
①嚢腫型ざ瘡
適応例の中でも最たる適応であるのがこの嚢腫型、他の代替手段では効果は望みにくいタイプです。嚢腫というのは皮膚の深い部分にしこりを形成し、医学的な表現ではありませんが、簡単に言うなれば「プツプツと触れるものではなく、表面がごつごつとし、触るとブヨブヨと触れる大きなニキビ」という感じです。嚢腫型にもまずは保険適応の薬を試しますが、将来的にクレーターといわれる凹み(萎縮性瘢痕)や赤い硬い膨らみ(肥厚性瘢痕)をきたし易く、お顔の皮膚に凹凸のみならず長引く赤み(炎症後紅斑)もしばしば生じますため、できるだけ早期にイソトレチノインの内服が望まれます。一方で膨らんだ赤い新しい病変が落ちつたあとに残った跡形病変については、急ごうが、急ぐまいが、あまり美肌治療の結果は左右されませんため、跡形治療においては経済的な余裕が出てから始めることで問題はありませんが、新しい病変が生じるその勢いだけはとにかく早期に沈めることに大きなメリットがあります。
②皮脂分泌過多がベースにあり酒さがオーバーラップするざ瘡
毛穴が目立ち(毛孔開大)赤ら顔で、ざらざらと触れるような皮脂が目立つタイプのニキビ。まずは保険適応の薬で治療しますが、体質的要素が強く、なかなかすっきりといきませんため、緊急性まではないですが、イソトレチノインでかなりツルッと綺麗になり、肌の質感が変わって肌悩みから解放されることが多いです。
③皮脂の多い頭のニキビ(頭皮の毛嚢炎)
頭に痛痒いぶつぶつが生じるタイプ。頭皮は髪の毛の中なのでさほど目立ちませんが、痛みなどでとても気になるし、美容室でも恥ずかしかったりするもの。成人男性に多く長引いてるケースが大半です。外用剤も塗りにくいし、多くはミノマイシン、ビブラマイシンといった内服薬を皮膚科で長期に処方されています。保険適応上有効な手立てが乏しいためやむないのですが、このタイプも多くはイソトレチノインが奏功します。
④女性の顎〜口周りのニキビ
妙齢女性で顎や口周りに繰り返し、保険適応の薬でも良くなったり悪くなったりを長期繰り返すタイプ。大きく深いニキビでない場合は、妊娠出産が可能な年齢のため、安易にイソトレチノんは出さずに、ピーリングやそのほかの施術で粘ることが多いですが、事情を十分に鑑みて、イソトレチノインを出すケースもございます。多くの方で効果を得られます。
嚢腫型ざ瘡の症例写真
まずは、症例写真を提示をご快諾いただきました患者さんに心よりお礼申し上げます。
症例①
他院皮膚科2カ所で、標準的な保険適応の治療を行なったもののごつごつと触れる大型の紅色結節を多数生じるため当院を受診されました。跡型が問題となりやすいタイプでしたので、初診時からイソトレチノイン(アクネトレント20mg/体重約50kg)を導入。開始後整形外科手術を予定され周術期には一時的に中断しやや悪化がありましたが、再開しイソトレチノイン内服10ヶ月経過の写真です。
非常に綺麗になりました。よく見ると凹凸感と淡い赤みが残っています。これらは時間経過で改善の見込みが乏しいと思われ、この残った赤みに現在はIPLというデバイス照射による治療を行なって、さらに綺麗を目指しています。
症例②
頚部に赤〜紫がかったごつごつとした結節病変を多数認めます。やはり嚢腫型。治療歴はありませんでしたので、初診から2ヶ月間、抗菌剤内服とざ瘡外用剤を行いましたが、ほぼ変化がありませんでしたので、早期にイソトレチノイン(アクネトレント30mg /体重約60kg)を開始しました。6ヶ月内服した時点で、自己判断にて内服を中止されました。(もう少し継続しておいた方が再発は少ないかなと思われましたが、結果的にはざ瘡の再発はなく高容量短期間で治療終了して経過良好です。)
内服5ヶ月の時点でほぼ炎症性の皮疹は治癒しました、残った硬い盛り上がりは、肥厚性瘢痕と言われる傷あとです。内服終了後4ヶ月、ちょうどイソトレチノイン開始後から1年の時点で、瘢痕に対して、ステロイド局所注射を行いました。向かって左側は1回の注射でほぼ平坦になりましたが、右側はまだ隆起が残存していましたので、14ヶ月時点で2回目のステロイド局所注射を施行しております。
まとめ
提示した2症例はともに嚢腫型ざ瘡でした。治療介入できた時点からは最大限の治療ができとても健康的な肌になりました。
イソトレチノインの副作用
唇の乾燥(ほぼ必発)、皮膚の乾燥、目の乾燥(ドライアイ)、鼻の乾燥・鼻血、肝障害、脂質異常症など。自覚症状にない副作用を把握するため定期的な血液検査が必須となります。
ニキビはいつから治療する?原因の追求よりスキンケアが近道
ニキビは10歳頃から、額のちょっとしたぷつぷつ(白色面ぽう)から生じるケースが多いですが、そのタイミングから、過酸化ベンゾイル(ベピオウォッシュゲルは9歳から適応となりました)などを用いいて早期に治療を開始し、ニキビの治療目標である、毛穴の傷跡(萎縮性〜肥厚性瘢痕、炎症後紅斑)などの跡形を残さないように治療しましょう。
YouTubeやInstagram、TikTokなど、最近はインフルエンサーにより色々な情報が溢れ、正しい情報の選択も難しい。ドラッグストアにも溢れるようにニキビ用〇〇といった製品が売られていますが、どれが自分に合うのか見つけるのも難しい。美肌への一番の近道はなんでしょうか。
食べ物や私生活に原因を求めがちですが、もちろんバランス良い食事と十分な睡眠は理想ではありますが、年齢的なホルモン分泌や体質的な要素は努力でどうにもならないので、一番重要なのはスキンケアです。今やニキビは青春のシンボルでもなんでもなく、肌が与える心理的なストレスは大きく、学生時代は気にならなくても、20-30代と成人してからその傷あとによる肌悩みを抱える方が多くいらっしゃいます。ニキビの治療ゴールは、毛穴の傷あとを残さないこと。クリニックで早期から適切な治療をすることが一番健康的な肌へのショートカットですので、こんなんで受診してもいいのかななんて思わずぜひご相談にいらしてくださいね。